はじめに
本ガイドは、Windowsファイルサーバーから SharePoint Onlineドキュメントライブラリにファイル共有を移行するための導入手順書です。権限を移行する場合は、バージョン管理のため、SharePointのストレージ使用量が増加する可能性があります。
移行に権限を含める場合、移行されるユーザーは、Microsoft 365のライセンスが割り当てられた、Microsoft 365ユーザーである必要があります。
ファイル共有ごとに、個別のMigrationWizプロジェクトを作成する必要があります。これは、プロジェクトごとに異なるコンテナーと異なる移行先SharePointサイトを指定する必要があるためです。
次のアイテムが、ファイルサーバーからSharePointに移行されます。(本移行では、バージョンの移行はサポートされていません。)
- フォルダー構造
- ファイル
- 権限
初めての移行
移行プロセスの詳細把握、計画、および管理の詳細については、移行計画と戦略を参照してください。初めて移行を実行する際は、このガイドを注意深くお読みください。
MigrationWiz
MigrationWizは移行ツールであり、同期ツールではありません。移行完了後に移行元のアイテムに変更が加えられた場合、その変更は移行先には反映されません。同様に、移行先で加えられた変更も、移行元には反映されません。MigrationWizには、(同期エージェントのような)「ライブ」での変更のモニタリング機能はなく、ユーザーの操作なしに競合解決などを処理することはできません。
MigrationWizは、ワークグループ全体で移行プロジェクトを共有する機能をサポートしています。プロジェクト共有機能をオンにすると、非アクティブなエージェント以外のすべてのエージェントに、全移行プロジェクトが表示されます。
2要素認証あるいは多要素認証を使用した移行は、サポートしていません。
MigrationWizでは、移行可能な最大ファイルサイズは、移行タイプと環境によって異なります。ただし、60GBを超えるファイルを移行することはできません。
ファイルパスの制限
SharePointおよびOneDrive for Businessでは、ファイルパスとファイル名に、400文字の文字数制限が設けられています。GoogleドライブやDropboxなどの他のドキュメントストレージサービスでは、文字数の制限がない場合があります。これらのプラットフォームからSharePointまたはOneDrive for Businessに移行する場合、ファイルパスとファイル名を短縮することが必要になる場合があります。本移行ガイドの「詳細オプション(Advanced Options)」の部分(後述の「MigrationWizでの手順」セクション内)で説明しているように、詳細オプションの「ShrinkFoldersMaxLength=300」を使用します。
前提条件
本移行には、適切な数の「共有ドキュメントライセンス(Shared Document License)」が必要です。 移行するデータの量に応じて、50GBまたは100GBのいずれかを購入します。 移行するデータの量がライセンスの許容量を超える場合は、1つのラインアイテムに対して複数のライセンスを使用することにより、追加のデータを移行することができます。
本シナリオでは、次のアイテムを移行することができます。
-
ドキュメント
-
フォルダー
-
権限
このライセンスでは、DeploymentProなどのダウンロードされたBitTitanソフトウェアの使用はサポートされていません。
クーポンの引き換えや他のライセンスタイプなど、ライセンスの詳細については、MigrationWizのライセンスおよびライセンス付与を参照してください。
Azure環境を準備する
- Azureストレージのコストを見積もります。この手順は任意ですが、顧客に事前にストレージのコストを提供する際に有用です。 すべての移行データをアップロードするには、十分なストレージ容量が必要です。
- Azureサブスクリプションを購入します。(または、1か月間無料の試用版を使用します。試用版では、移行できるデータ量が少量となります。)
- Azureストレージアカウントを作成します。移行先のMicrosoft 365テナントと同じMicrosoftデータセンターに、Azureストレージアカウントを作成することをお勧めします。特に指定がない限り、すべての設定をデフォルトのままにします。
- 次のサイトにアクセスします。https://portal.azure.com
- 「ストレージアカウント(Storage accounts)」をクリックします。
- 「+ 作成(+ Create)」をクリックします。
- 新しいストレージアカウントを作成する「サブスクリプション(Subscription)」を選択します。
- 「リソースグループ(Resource group)」を選択します。 リソースグループがない場合は、新しいグループを作成します。
- 「ストレージ アカウント名(Storage account name)」を入力します。
- データセンターの「地域(Region)」を選択します。
- 「パフォーマンス(Performance)」フィールドで、「標準(Standard)」を選択します。
- 「冗長性(Redundancy)」フィールドで、「ローカル冗長ストレージ(Locally Redundant Storage (LRS))」を選択します。
- 「確認および作成(Review + create)」をクリックします。
- 「作成(Create)」をクリックします。
- デプロイが完了したら、「リソースに移動(Go to resource)」をクリックします。
- 「セキュリティとネットワーク(Security + networking)」で、「アクセスキー(Access keys)」を選択します。
- 「ストレージアカウント名( Storage account name)」と「キー1(key1)」の値をコピーします。 これらは、UploaderWizの実行時や移行プロジェクト内で使用します。
- 「データストレージ(Data storage)」の下にある「コンテナー(Containers)」をクリックします。
- アップロードする個々のファイルサーバーごとにコンテナーを作成し、名前を書き留めます。
MigrationWizは、アップロード時に3つのメタデータファイルを作成し、各コンテナーに追加します。MigrationWizは、移行中に、これらのファイルをOneDrive for Businessでのフォルダー構造の構築や権限の移行のために使用します。移行が完了するまで、ファイルを削除しないでください。
移行先環境を準備する
移行に使用する権限を設定します。
- グローバル管理者としてサインインしていることを確認します。
- MigrationWiz-SharePoint-FullControlに移動し、プロンプトが表示されたら、アプリのアクセスに同意します。
- Microsoft 365管理ポータルで、「MigrationWiz」という名前の新しいセキュリティグループを作成します。
- このセキュリティグループに、移行プロジェクトで使用するサービスアカウントをメンバーとして追加します。
また、移行先のSharePointに、サイト/サブサイトとドキュメントライブラリが作成されていることを確認する必要があります。
GCC Highテナントへの移行では、上記の手順は適用されません。 代わりに、次の手順に従ってください。
- サービスアカウントにMicrosoft 365のライセンスが割り当てられていることを確認します。
- このアカウントに、移行先のSharePointサイトのサイトコレクション管理者の権限を付与します。
- テナントで、MigrationWiz-SharePoint-Delegatedにアクセスし、アプリのアクセスに同意します。
- プロジェクトの「詳細オプション(Advanced Options)」の「サポート(SUPPORT)」セクションに、「OneDriveProImportEnvironment=AzureUSGovernment」を追加します。
Azureにファイルをアップロードする
マシンのローカル管理者権限を持つドメイン管理者アカウントでログインしている場合、ファイルサーバー、またはドメインに参加しているコンピューターから、アップロードの手順を実行します。本プロセスでは、UploaderWizを使用します。UploaderWizの使用方法、構成、およびトラブルシューティングについては、該当するガイドを参照してください。
- こちらから、UploaderWizユーティリティをダウンロードして展開します(たとえば、「c:\apps\uploaderwiz」ディレクトリに展開します)。
- ファイル共有へのアクセスを読み取り専用に設定し、移行が行われていること、およびファイル共有が現在読み取り専用であることを、ユーザーに通知します(この手順は任意ですが、推奨されます)。これにより、移行中にユーザーがファイル共有にファイルを追加するのを防ぐことができます。
- 管理者として実行しているコマンドコンソールで、UploaderWizを展開したディレクトリから次のコマンドを実行します(「x」の部分を、お客様自身の情報に置き換えます)。
UploaderWiz -accesskey "xxxxxxxx" -secretkey "xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx" -container xxxxxx -type azureblobs -rootpath "xxxxxxxx" 注:ドメインに参加しているコンピューターからこれらの手順を実行する場合は、ドメインに参加しているコンピューターからファイルサーバーに、「x:\File Server」のようにネットワークドライブをマップする必要があります。 パスにスペースが含まれている場合は、引用符で囲む必要があります。-
- 「-accesskey」は、ストレージアカウント名です。
- 「-secretkey」は、ストレージアカウントのアクセスキーです。
- 「-container」は、アップロード先のコンテナーの名前です。
- 「-rootpath」は、移行するファイルのパスです。
-
MigrationWizでの手順
ドキュメントプロジェクトを作成する
- MigrationWizにログインします。
- 「マイ・プロジェクトへ」ボタンをクリックします。
- 「プロジェクトを作成(Create Project)」ボタンをクリックします。
- 「ドキュメントプロジェクトを作成(Create a Document Project)」を選択します。
- 「次のステップ」をクリックします。
- 「プロジェクト名(Project Name)」を入力し、「顧客(Customer)」を選択します。
- 「次のステップ」をクリックします。
- 「新規」をクリックして新しいエンドポイントを作成するか、ドロップダウンリストから既存のエンドポイントを選択します。
- 「エンドポイント名(Endpoint Name)」を入力します。
- 「エンドポイントタイプ(Endpoint Type)」で、「Azure File System」を選択します。
- 「ストレージアカウント名(Storage Account Name)」を入力します。
- 「アクセスキー(Access Key)」を入力します。
- 「追加(Add)」をクリックします。
- 「次のステップ」をクリックします。
- 「新規」をクリックして新しい移行先エンドポイントを作成するか、ドロップダウンリストから既存のエンドポイントを選択します。
- 「エンドポイント名(Endpoint Name)」を入力します。
- 「エンドポイントタイプ(Endpoint Type)」で、「SharePoint」を選択します。
- 「SharePoint OnlineテナントのURL(SharePoint Online Tenant URL)」フィールドに、移行先のSharePointサイト/サブサイトのURLを入力します(例:https://domain.sharepoint.com/sites/Subsitename)。
- 「管理者ユーザー名(Administrator Username)」および「管理者パスワード(Administrator Password)」フィールドに、上記の「移行先環境を準備する」セクションでセキュリティグループに追加したサービスアカウントのユーザー名とパスワードを入力します。
- 「Microsoftが提供するAzureストレージを使用する(Use Microsoft Provided Azure Storage)」(推奨)、または、「カスタムAzureストレージを使用する(Use Custom Azure Storage)」のいずれかを選択します。 これは、ファイルをアップロードしたコンテナーとは異なります。 お客様所有のストレージを使用する場合は、別の新しいAzureストレージアカウントを作成することをお勧めします(手順は上記と同じです)。
- 「追加(Add)」をクリックします。
- 「保存して概要へ移動」をクリックします。
- 右側のメニューから、「詳細オプション(Advanced Options)」をクリックします。
- 「サポート(SUPPORT)」セクションに、次の詳細オプションを追加します。 注:「=」記号の両側にスペースは入りません。また、大文字と小文字が区別されます。
- ShrinkFoldersMaxLength=200 - ファイルパス名を短縮して、移行中に問題が発生するのを防ぎます。 パスの長さが指定した文字数を超えている場合にのみ適用されます。
- RenameConflictingFiles=1 - ファイル名の重複によるエラーの発生を防ぎます。
- InitializationTimeout=8 - 初期化のタイムアウト値を8時間に増やします。 これは、特に大規模な移行に有用ですが、小規模な移行で使用しても問題ありません。
- 「移行元/移行先(Source/Destination)」タブをクリックします。
- 「移行元(SOURCE)」セクションで、「コンテナー名(Container Name)」を、アイテムをアップロードしたコンテナー名に変更します。
- 「保存(Save)」をクリックして、「プロジェクトを保存(Save Project)」をクリックします。
アイテムを追加する
- 「新しいアイテムを追加(Add New Items)」 > 「クイック追加(Quick Add)」をクリックします。
- 「移行先(DESTINATION)」セクションの「ライブラリ(Library)」フィールドに、「Shared Documents」(または、移行先の該当するドキュメントライブラリの名前)を入力します。 「移行元(SOURCE)」セクションには、何も入力する必要はありません。
「資格情報の検証(Verify Credentials)」を実行する
- 検証するアイテムを含むプロジェクトを開きます。
- 検証するアイテムを選択します。
- ダッシュボードの「移行を開始」ボタンをクリックします。
- ドロップダウンリストから、「資格情報の検証(Verify Credentials)」を選択します。
検証が完了すると、検証結果が「ステータス(Status)」セクションに表示されます。
移行を開始する
- ユーザーを選択します。
- 上部の「移行を開始」ボタンをクリックします。
- 「完全移行(Full Migration)」を選択します。
- 「移行を開始」をクリックします。
「エラーの再試行(Retry Errors)」を実行する
ユーザーリストを確認し、「移行に失敗しました(Failed)」という赤いエラー表示をクリックします。表示された情報に従って操作してください。
問題が解決しない場合は、サポートにお問い合わせください。
移行後の手順
- 移行元のファイル共有へのアクセスを削除します。
- SharePoint Onlineのトレーニングを提供します。
- ファイルサーバーを廃止します。この手順は、ファイルサーバーからホームディレクトリなどのすべてのデータを移行した後に、今後ファイルサーバーを利用しないことが確実な場合にのみ、実行してください。
- Azureへのアップロード時に作成された、すべてのAzure Blobコンテナーを削除します。
重要:これにより、移行後にAzureコンテナーのコストが発生するのを防ぐことができます。UploaderWizで作成されたコンテナーのみを削除するように注意してください。これらのコンテナーは、名前がファイル共有と同じであり、作成日がアップロード日になっています。