本記事は、IMAPシステムからMicrosoft 365にメールボックスを移行するための導入手順書です。
アプリパスワードはMicrosoft 365エンドポイントではサポートされていません。
IMAPの移行では、APIの制限により、メールアイテムのみが移行されます。MigrationWizでは、IMAPサーバーに保存されているメールアイテムのみが移行されます。サーバーにメールのコピーが残っていることを確認してください。メールがIMAPサーバーになく、ローカルのPSTファイルに保存されている場合は、PSTの移行プロセスを使用してください。データがローカルのOutlook OSTファイル(Outlook 2013およびOutlook 2016)に保存されている場合は、メールボックスをPSTファイルにエクスポートした後に、PSTの移行プロセスを実行してください。
以下に示すツールと資料を活用すると、移行をより簡単に行うことができます。
初めての移行
移行プロセスの詳細把握、計画、および管理の詳細については、移行計画と戦略を参照してください。初めて移行を実行する際は、このガイドをお読みください。
MigrationWiz
MigrationWizは移行ツールであり、同期ツールではありません。移行完了後に移行元のアイテムに変更が加えられた場合、その変更は移行先には反映されません。同様に、移行先で加えられた変更も、移行元には反映されません。MigrationWizには、(同期エージェントのような)「ライブ」での変更のモニタリング機能はなく、ユーザーの操作なしに競合解決などを処理することはできません。
MigrationWizは、ワークグループ全体で移行プロジェクトを共有する機能をサポートしています。プロジェクト共有機能をオンにすると、非アクティブなエージェント以外のすべてのエージェントに、全移行プロジェクトが表示されます。
二要素認証または多要素認証を使用した移行は、サポートしていません。
MigrationWizでは、移行可能な最大ファイルサイズは、移行タイプと環境によって異なります。ただし、60GBを超えるファイルを移行することはできません。
このシナリオではメールフォルダーのみが移行されます。連絡先とカレンダーのアイテムは手動でエクスポート/インポートする必要があります。
前提条件
IMAPメールシステムには、さまざまなバージョンがあります。このため、実際の「完全移行(Full Migration)」プロジェクトの実行前に、1つ以上のメールボックスで「トライアル移行(Trial Migration)」を実行することをお勧めします。 「トライアル移行(Trial Migration)」が完了したら、移行先のフォルダー構造を確認して、ディレクトリ構造が正しいことを確認します。
「トライアル移行(Trial Migration)」を実行するには、次の手順に従います。
- MigrationWizアカウントにサインインします。
- 移行プロジェクトをクリックします。プロジェクトをまだ作成していない場合は、(下記の「メールボックス移行プロジェクトを作成する」に記載されている手順に従って)プロジェクトを作成し、そのプロジェクトにユーザーを追加します。
- 「トライアル移行(Trial Migration)」を実行するユーザーを選択します。
- 「移行を開始」をクリックします。
- ドロップダウンリストから「トライアル移行(Trial Migration)」を選択します。
- 「トライアル移行を開始」をクリックします。
「MigrationWizでの手順」セクションに記載されているフォルダーマッピングを実行すると、フォルダーが「受信ボックス/ラベル名」のような階層構造ではなく、移行先メールボックスのルートに確実にマッピングされます。
移行元環境を準備する
- 接続テストツールを使用して、IMAPサーバーへの接続をテストします。フォームに入力し、「テスト(Test)」ボタンをクリックします。
- ユーザーリストをCSVファイルにエクスポートします。
- 少なくとも読み取り権限を持つ管理者アカウントであれば、ユーザーリストをエクスポートすることができます。
- 管理者アカウントを持っていない場合は、IMAPホストに依頼して、CSVファイル形式の完全なユーザーリストを提供してもらう必要があります。
- このCSVファイルは、MigrationWizメールボックスプロジェクトにユーザーを一括追加する際に使用します。
移行先環境を準備する
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移行先のMicrosoft 365テナントでユーザーアカウントを設定し、ライセンスを割り当てます。これにはいくつかの方法があります。オプションは、次のとおりです。
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手動で1つずつ追加する。詳細については、Microsoftの記事、ユーザーを追加して同時にライセンスを割り当てるを参照してください。
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CSVファイルを使用して、一括でインポートする。詳細については、Microsoftの記事、Microsoft 365に複数のユーザーを同時に追加する ー 管理ヘルプを参照してください。
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PowerShellスクリプトを使用する。詳細については、TechNetの記事、PowerShellを使用してMicrosoft 365ユーザー アカウントを作成するを参照してください。
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移行に使用する管理者アカウントをMicrosoft 365で作成するか、テナントのグローバル管理者アカウントを使用します。サービスアカウントには、少なくともメールボックスへのフルアクセス権と偽装権限が必要です。Exchange Onlineでは、委任ではなく偽装を使用することをお勧めします。偽装を手動で設定する手順については、Microsoft 365およびExchangeでの移行におけるMigrationWizの偽装と委任を参照してください。
先進認証の要件
移行元または移行先がExchange Onlineの場合、メールボックス、アーカイブメールボックス、およびパブリックフォルダープロジェクトではExchange Webサービス(EWS)が使用されるので、移行先テナントではMicrosoft 365(全製品)の移行における認証方法の記事の「移行のためのクライアントIDとテナントID設定の取得」セクションに記載されている手順を実行する必要があります。この設定手順は、グローバル管理者アカウントを使用して実行します。
移行先環境を準備する前に、上記のドキュメントを確認してください。
MSPCompleteでの手順
顧客を作成する
- 上部のナビゲーションバーで、「追加(Add)」ボタンをクリックします。
- 「顧客(Customers)」ページで、「顧客を追加(Add Customer)」ボタンをクリックします。
- 左のナビゲーションウィンドウで、該当するワークグループを選択し、「顧客 (Customers)」 をクリックします。
- 「顧客を追加(Add Customer)」ボタンをクリックします。
- 「顧客を追加(Add Customer)」フォームに、新しく追加する顧客の情報を入力します。「プライマリメールドメイン(Primary Email Domain)」と「会社名(Company Name)」は必須項目です。その他の項目は任意です。
- 「保存(Save)」をクリックします。
- 追加する顧客ごとに、上記の手順を繰り返します。
ライセンスを購入する
本移行シナリオでは、ユーザー移行バンドル(User Migration Bundle)ライセンスを購入することをお勧めします。ユーザー移行バンドル(UMB)ライセンスを使用すると、1つのライセンスで複数の種類の移行を実行することができます。また、DeploymentProを使用して、Outlookのメールプロファイルを構成することもできます。ライセンスの詳細については、MigrationWizのライセンスを参照してください。
ライセンスを購入するには
- BitTitanアカウントにサインインします。
- 上部のナビゲーションバーで、「購入(Purchase)」をクリックします。
- 「選択(Select)」ボタンをクリックして、「ユーザー移行バンドル(User Migration Bundle)」ライセンスを選択します。
- 購入するライセンス数を入力します。「今すぐ購入(Buy Now)」をクリックします。
- 必要に応じて、「請求先住所(Billing Address)」を入力します。
- 「次へ(Next)」をクリックします。
- 「注文内容(Order Summary)」を確認し、「支払い方法(Payment Method)」を入力します。
- 「購入する(Place Your Order)」をクリックします。
ライセンスを適用する
- 左のナビゲーションウィンドウの上部で、ワークグループを選択します。 顧客と移行プロジェクトを作成したワークグループを選択します。使用中のログインアカウントで作成したプロジェクトではない場合は、そのログインアカウントをワークグループに紐づける必要があります。
- 左のナビゲーションウィンドウで、「顧客(Customers)」をクリックします。
- ユーザー移行バンドル(UMB)ライセンスを適用するユーザーを含む顧客をクリックします。
- ページ上部の「ユーザー(Users)」タブをクリックします。
- ライセンスを適用するユーザーのメールアドレスの左にあるチェックボックスをオンにします。
- ページ上部の「ユーザー移行バンドルライセンスを適用する(Apply User Migration Bundle License)」ボタンをクリックします。独自ドメインでユーザーを顧客ページに追加することをお勧めします。「.onmicrosoft」ドメインを移行に使用する場合は、ユーザー名の表示を「.onmicrosoft」ドメインに変更する前に、ユーザー移行バンドル(User Migration Bundle)ライセンスを適用します。
- 選択したユーザーの中に、「ユーザー移行バンドル(User Migration Bundle)」ライセンスを割り当てられていないユーザーが1人でもいる場合は、「確認(Confirm)」をクリックします。 重要: 割り当て可能なUMBライセンスが不足している場合、ワークグループのマネージャー(Manager)以上の役割のアカウントに対し、必要な情報がすべて記載されたフォームが表示され、手順に従ってUMBライセンスを購入することができるようになっています。
MigrationWizでの手順
メールボックス移行プロジェクトを作成する
- 「マイ・プロジェクトへ」ボタンをクリックします。
- 「プロジェクトを作成(Create Project)」ボタンをクリックします。
- 作成するプロジェクトタイプをクリックします。本移行では、下記のタイプを選択してください:
- メールボックス(Mailbox): メールボックスプロジェクトでは、プライマリユーザーのメールボックスのコンテンツを、古い環境から新しい環境に移行します。ほとんどのメールボックス移行で、メール、カレンダー、および連絡先を移行することができます。
メールボックスの移行では、管理者資格情報を使用してメールボックスにアクセスします。ほとんどの移行シナリオで、移行元メールボックスへのフルアクセス権を持つ管理者アカウントが必要です。
- 「次のステップ(Next Step)」をクリックします。
- 「プロジェクト名(Project Name)」を入力し、「顧客(Customer)」の一覧から顧客を選択します。
- 「次のステップ(Next Step)」をクリックします。
エンドポイント
エンドポイントは、MSPCompleteではなくMigrationWizで作成します。次の手順に従って、MigrationWizでエンドポイントを作成してください。
既存のエンドポイントを選択する場合、ドロップダウンリストには、エンドポイントが最大10までしか表示されないため、注意が必要です。既存のエンドポイントが10を超える場合は、検索する必要があります。エンドポイントの検索では、大文字、小文字、数字が区別されます。例えば、「customer」を検索する際に「Cust0mer」と入力すると、検索結果には何も表示されません。エンドポイントの作成時に使用した、固有のスペルや大文字のリストを作成しておくことをお勧めします。
既存のエンドポイントを使用することも、新しいエンドポイントを作成することもできます。
新しい移行元エンドポイントを作成するには:
- 「エンドポイント(Endpoints)」をクリックします。
- 「エンドポイントを追加(Add Endpoint)」をクリックします。
- 「IMAP」を選択します。
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「サーバー名(Server Name)」は、次の形式で入力する必要があります: imap.example.com
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「サーバーポート(Server Port)」を入力します。原則としてサーバーポートは、143または993(SSLを使用している場合)のいずれかになります。
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SSLを使用している場合は、「SSLを使用(Use SSL)」にチェックを入れます。
新しい移行先エンドポイントを作成するには:
- 「エンドポイント(Endpoints)」をクリックします。
- 「エンドポイントを追加(Add Endpoint)」をクリックします。
- 「エンドポイント名(Endpoint Name)」を入力します。
- 「エンドポイントタイプ(Endpoint Type)」で「Microsoft 365」を選択します。
- フィールドに必要事項を入力します。
- 「アプリケーション(クライアント)ID」フィールドと「ディレクトリ(テナント)ID」フィールドに値を入力します。
重要
移行先エンドポイントを設定する際は、「クライアントID」フィールドと「テナントID」フィールドに必ず入力してください。入力しないと、移行プロジェクトを保存することができません。
移行元および移行先エンドポイントのいずれか、または両方に資格情報が提供され、顧客が「保存して概要へ移動」をクリックすると、MigrationWizによるMicrosoft 365エンドポイントの検証が実行されます。
この検証では、プロジェクトに入力された管理者資格情報と先進認証の設定のみが検証されます。問題がある場合は、エンドポイント設定画面にリダイレクトされ、エラー メッセージまたはポップアップが表示されます。クリックすると、エラーに関する詳細情報を表示することができます。
エンドポイント設定時の一般的なエラー
詳細については、先進認証における最も一般的なエラー(Common Errors Using Modern Authentication)の記事の「AADSTS700016」、「AADSTS90002」、および「ADDSTS50126」の説明を参照してください。
ユーザーを追加する
移行するユーザーアカウントをプロジェクトに追加します。MigrationWizでは、メールボックスをシステムに一括でインポートすることができます。
「一括追加(Bulk Add)」オプションを使用して、本ガイドの「移行元環境を準備する」セクションで作成したCSVファイルからインポートします。
重要
この種類のIMAPエンドポイントでは、管理者資格情報はサポートされていません。- 各ユーザーに資格情報の入力を要求します。
- 同じパスワードを使用するようにメールボックスをリセットします。(これにより、ユーザーがロックアウトされます。)
- MigrationWizによって、エンドユーザーに自動的に資格情報の入力が要求されます。詳細については、こちらを参照してください。
ユーザーに資格情報の入力を要求するには:
「移行元メール(Source Email)」列に移行元メールアドレスを入力し、「移行元メールボックスのログイン名とパスワードが分かりません(I don't know the login name and password for the Source mailboxes)」のチェックボックス(下の例で青色にハイライトされている部分)をオンにします。これにより、ユーザーは移行プロセス中に資格情報を提供するように要求されます。
移行先ユーザーの場合、各ユーザーの移行先メールアドレスを、Exchange Onlineメールボックスへのインポートで使用される管理者資格情報(移行先エンドポイントの設定で使用したもの)として入力します。
一括追加(Bulk Add)
必要な資格情報を収集した後、1つまたは複数のメールボックスをインポートするには:
- MigrationWizアカウントにサインインします。
- 一括追加を実行するプロジェクトを選択します。
- 「新しいアイテムを追加(Add New Items)」をクリックします。
- 「一括追加」をクリックします。
- ページの指示に従って、操作を行ってください。
詳細オプション(Advanced Options)を追加する
推奨オプション
「移行元/移行先(Source/Destination)」タブ:
- 移行先で偽装(impersonation)を使用するように設定します。「移行先で偽装を使用する(Use impersonation at Destination))」のチェックボックスをオンにします。
「サポート(Support)」タブの「サポートオプション(Support Options)」:
- フォルダーマッピングを追加します:FolderMapping="^INBOX/-"
- この設定により、移行先メールボックスにおいて、フォルダーが「受信トレイ/ラベル名」のような階層ではなく、ルートにマップされます。
デフォルトオプション
プロジェクトの「詳細オプション(Advanced Options)」の「サポート(Support) 」タブ内に表示される、移行元の「クライアントID」および「テナントID」は、表示専用です。そのため、この「サポートオプション(Support Options)」フィールドから編集や削除を行うことはできません。編集するには、「プロジェクトの編集」を行う必要があります。
警告
デフォルトの「詳細オプション(Advanced Options)」を更新することはできません。オプションを変更したり、新規に追加しようとすると、次のメッセージが表示されます。
「資格情報の検証(Verify Credentials)」を実行する
- 検証するアイテムを含むプロジェクトを開きます。
- 検証するアイテムを選択します。
- ダッシュボードの「移行を開始」ボタンをクリックします。
- ドロップダウンリストから、「資格情報の検証(Verify Credentials)」を選択します。
検証が完了すると、検証結果が「ステータス(Status)」セクションに表示されます。
ユーザーに通知する
移行が行われることをユーザーに通知します。すべてのユーザーにメールを送信し、移行の日時を知らせます。
移行を実行する
前段階移行(Pre-Stage Migration)サイクル
- 移行するユーザーを選択します。
- 上部の「移行を開始」ボタンをクリックします。
- 「前段階移行(Pre-Stage Migration)」を選択します。
- 「移行のスケジューリング」セクションのドロップダウンリストから、「90日前(90 Days Ago)」を選択します。
- 「移行を開始」をクリックします。
MXレコードカットオーバー
DNSプロバイダーのポータルで、MXレコードを切り替えます。
その際に、「自動検出(AutoDiscover)」(CName)の設定も行います。
- ユーザーを選択します。
- 上部の「移行を開始」ボタンをクリックします。
- 「完全移行(Full Migration)」を選択します。
- 「移行を開始」をクリックします。
エラーの再試行(Retry Errors)を実行する
ユーザーリストを確認し、「移行に失敗しました(Failed)」という赤いエラー表示をクリックします。表示された情報に従って、操作を行ってください。
問題が解決しない場合は、サポートにお問い合わせください。
「予期しない余分な引数(Unexpected Extra Arguments)」エラー
MigrationWizダッシュボードに "Unexpected extra arguments to Examine Context:FolderNameWithQuote" というメッセージが表示された場合は、以下の手順に従って、サポートオプションフラグ「AllowQuoteInFolder=1
」をアイテムレベルで追加し、「エラーの再試行(Retry Errors)」を実行します。
手順:
- 編集するアイテムの右にある「アイテムの編集(Edit Item)」アイコンをクリックします。
- 「サポート」セクションでサポートオプションを入力します:
AllowQuoteInFolder=1
- 「アイテムを保存(Save Item)」をクリックします。
- MigrationWizダッシュボードで、ラインアイテムを選択します
- 「移行を開始」をクリックします。
- 「エラーの再試行(Retry Errors)」を選択します。
Outlookの設定
ユーザーは新しいOutlookプロファイルを作成し、署名を再設定し、以前のプロファイルに添付されていたPSTファイルを再添付する必要があります。
統計情報をリクエストする
MigrationWizダッシュボードの「円グラフアイコン」をクリックすると、プロジェクトのすべての移行統計情報をメールで受信することができます。